5月のエオルゼア
魔導ターミナルを使って移動した先は最終層の衛兵宿房と呼ばれる場所。人が寝泊まり出来そうな場所には到底思えないが、これまで通ってた中では割と広く、案外悪くもないのかもしれない。 「いないね」 「無事だといいけど」 「うん、もしかしたらダンジョン…
自分たちの世界から彼女を追い出そうと心無い言動が降りかかり、そこに存在していないかのように扱われ、「私がいなくなっても世界は何も変わらない」と悟った。そして溢れ出したそれは、彼女に抑えきれない衝動を与えた。 目の前のイノリは歴史の問題を解い…
今夜は星々が競うように満天に輝く。思わずゲームの世界だと言う事を忘れてしまうくらいに美しく心がうっとりする。「快晴」か「晴れ」、この世界には晴れには二種類しかないそうだ。それでも昨日の空よりも心が優しく撫でられるような心地よい気分になるの…
コルク亭では、ナタクは相変わらずNPCのように突っ立っていた。 それからしばらくナタクの元で修行を積むことになった。単純な戦闘能力以外にも観察眼や視野の広さ、的確な判断。ヒーラーに求められるものは多く、ナタクから次々と与えられる課題は上手く行…
ザナラーンと黒衣森の狭間ででトラベラーを狙った暴漢に襲われているところをアルが助けてくれたのだそうだ。 アルの話によると、『始まりの朝』と呼ばれるおそらくこの世界に人々が迷い込み始めた最初の頃、同時期にこの世界に迷い込んだ者が多かった。情報…
カーバくんとの修行は順調で、すぐにリムサの周りのモンスターくらい平気に戦えるくらいになった。 日中はモンスターを討伐し、日が暮れるとリムサ近くのリゾートのような住宅地の空き家で一日の疲れを落とす。 「エディー!」 夜の海でぷかぷかと浮かぶエデ…
「あそこがリムサ・ロミンサ?」 「あそこはウルダハ!」 まだまだ道は長そうだ。すっかり陽も落ちてきてイノリの影が伸びる。ボクの影はその半分くらいの長さ。 二人で線路の上を歩き進んでいく。 「ウルダハには寄らないの?」 「この先にね、アルさんの別…
グリダニアは木々に囲まれた田園都市で、森の一部のように馴染んでいた。水車が回っていたり、革細工や木の加工所や工房のようなものも見られた。新市街から旧市街と呼ばれる方へ行くとマーケットもあり、人々の生活がうかがい知れた。 「この人達はNPCじゃ…
この世界の舞台設定は中世くらいだろうか? 木造りの暖かみのある店内を見回すと機械と呼べるような代物は一つも見当たらなかった。木製のバーカウンター、椅子、吊り下げられたハーブ。森林の中にいるような生の素材の香りがする。灯りはあるが火を使ってい…
この世は生き残った者が勝ち組だ。生前何を成そうがいなくなれば、生者の間で話のネタにされ、あることないこと吹聴される。人生100年時代というが、たかだか100年だ。何を成そうにも短すぎる。大志を抱けば志半ばで果てる。 だったら、何もしないで何も希望…