LLP Labo -FF14 エオルゼア研究所-

ウマいヘタ関係ナシに楽しくがモットーな人達の宴

8月のエオルゼア 19.08.10

 

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私がいま仕事に追われ、慣れない残業をしているのは、人気俳優が大好きな吉田さんが連日休んでいるからだ。
原因は、まあ人気俳優のせいだろう。好きなものに対して一喜一憂できることは羨ましくも思うが、会社を休むのはいただけない。
私にとって会社を休む程ショックな事ってなんだろう。私仕事が楽しいのかな?
「あの、小坂先輩は仕事楽しいですか?」
花瓶の水を取り替えている先輩に問いかけた。
「なに言ってんだ? 楽しい訳ないだろ?」
先輩が大袈裟に笑う。
「ですよね……」
「でもね、楽しみたいと思ってるよ。その為に毎日頑張ってんだ」
先輩がおもむろに窓に近づき、ガラッと開ける。
「ほら、見て見ろよ、こんな時間なのにまだ太陽は沈んでないんだ。夏至ってわかる?」
今日は夏至か。
「日の長さは毎日変わる。梅雨入りしたっていうのが嘘みたいに晴れてるだろ?」
 先輩が振り返り私を見る。
「でも晴れてることに心を動かされるのは、昨日までずっと雨だったからなんじゃないかな?」
逆光になって見えづらかったが、ニヤリと笑うのが分かった。
「昨日今日の積み重ねで明日が訪れるんだ。だから今日頑張って、そんで良い明日を迎えたい。そんだけ」
「でも頑張っても疲れちゃうだけじゃ」
「上手くいかないときもあるさ、私はそれすら楽しんでやる。なんて思ってる」
先輩は再び私に背を向け窓の外を見た。
「そんな毎日も、そんな自分も嫌いじゃない。好きだ! 仕事楽しいぞ! 楽しくないから楽しいんだ!」
言ってることめちゃくちゃな気もするけど、一番長い夕日のせいかそんな先輩は輝いて見えた。

曲がり角の献花は今日も道路にはみ出さないよう綺麗に並んでいた。きっと家族が毎日通っているのだろうな。手を合わせながらぼんやりとする。
「楽しもうとすることが楽しいんだ」
そう言ったのはマスターだったかな、でも結局疲れていなくなるなら頑張らなければいいのに。

風呂上り、いつも通り挨拶を済ませ、髪を乾かす。
「楽しいってもっと気楽でいいんじゃないの? 気付いたら楽しいもの……」
羊の言葉がフラッシュバックする。

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いま、楽しいと思えないのは、楽しませてくれる相手がいないから。私なんにも変わってない。
モニターの前に戻ると、いくつものお誘いが流れていた。
「レベルレ行く人~? T1D1」
「レベルレ Tノ」
「レベルレ ノ DPSです」
「メインクエの神龍手伝ってくれませんか?」
「神龍いくよ~」
「あと5分待ってくれたら行けます!」
「メインクエストルレ周回しない?」
「メインルレ周回とか鬼かw」
「何時間かかるのそれww」
「リテイナーがまた、ウソウソ保護してきたんだけど、誰か引き取ってくれない?」
「ウソウソうちで引き取らせてください!」
すごい、こんな活発なんだ。
「レベルレ〆」
「神龍ご協力ありがとうございます!満員御礼です!」
「メインクエ……あ……あ……」
「ウソウソ里親無事見つかりました~」
離席中のログを読んでいると募集は瞬く間に締め切られている。
ついていけるか少し不安になった。私なんかが参加していいのかな。
そう物思いに耽っているとまたFCチャットが流れる。
 
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へぇー、イベントかー。光のギャザラー? なにそれ……?

流れていくチャット欄を追うだけで立ちすくんでる私を見て羊の男が近寄ってきた。
「いろんなイベントや募集があります、最初はそこから自分に合う楽しみ方を探してみてください」
 羊の男が続ける。
「参加は自由です。自分で参加しないと参加できませんよ? ゲームにログインするのと一緒です。」
「参加してみてもいいですか?」
「許可はいりません、必要なのは意志です」
そういうと、羊の男は氷漬けになるエモート(主に感情表現等に使われるアクション)を繰り返していた。やっぱりこの人は良く分からない。でも、
「参加したいです!」
「はい、いってらっしゃい」
踏み出してみよう。

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つい夜更かしをしてしまった。無意識に手櫛を入れる。絡まった髪に引っかかり思わずため息が漏れる。
トリートメントしたいな。髪が傷んでいることへのため息というよりは、今日も残業なんだろうなという諦めのため息だったのかもしれない。
今朝のニュースは、人気俳優が新婚早々女性と密会していたことを報じていた。
やはり、今日も吉田さんの姿はなかった。そのことに驚きはなかった。ただ、今日は小坂先輩の姿も見当たらなかった。
「珍しいな、どうしたんだろう」
やっぱり頑張り過ぎで疲れちゃったのかな。私はやっぱり頑張らないでいよう。何事もなくただただ日々を消化していければいいや。

昨日のイベントはみんなで釣りをし、その釣果を競うというものだった。
釣りって現実でもゲームでも待ってるばかりで面白くない。そんな風に思ってたけど、案外みんなで集まってやると楽しかった。現実の釣りもやってみれば案外楽しめるものなのかもしれない。
今日は帰って昨日のイベントと同じ場所で一人きりで釣りをしてみた。
やっぱり面白くない。

「釣り好きですか?」
そう話しかけてきたのは、昨日のイベントを主催したFCメンバーのシラツユさんだった。
「昨日はすごく楽しかったです」
「みんなで集まると楽しさが増しますよね」
「初めてのイベント参加だったので、緊張しましたけど、なんか雰囲気が楽しくて、気付いたらこう、夢中になっていたというか」
「一人でやるのも好きですけど、やっぱりみんなで集まってわいわいするのはいいものですよね」

 

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「シラツユさんはイベントの担当さんなんですか?」
「違いますよw 私がただ釣りが好きなだけで、私の好きな釣りでみんなと一緒に遊びたかっただけです」
シラツユさんの手元の釣り竿が大きくしなると朗らかな笑顔が一転、真剣な面持ちとなった。
「嫌々参加する人はいないですし、みんな楽しもうって思って参加してくれてるから、だから楽しい雰囲気が生まれるのかな?」
そういうと、どうやら釣り上げたようだ。
「らっしゃあああああ!! つれたああああああああああああああああああ」
雄たけびを上げると、すぐに可愛らしい笑顔に戻った。
「何が釣れたんですか?」
「たこ!!」
目が輝いている。
「た、たこ……?」
「うん、メガオクトパスって言う名前のこの海のタコ!……じゃなくてヌシです!」
「ヌシを釣り上げたんですか? すごい!!」
「あ、竿!! かかってる!!」
私の手元の釣り竿がしなる。
「がんばって!」

 

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釣れたのは、マルムケルプという名の海藻だった。
「いい出汁取れそうですね」
「味噌汁でも作ろうかな・・・w」
「釣りってやっぱり釣れた瞬間が絶頂でもあるんですが、それまでに道具を準備したり、餌を選んだり、場所や天気を調べたり、その過程もわくわくして楽しいんです。いっぱい準備を重ねれば重ねる程、釣れた時の嬉しさが何倍にも膨らんで、その喜びは自分で作り上げて勝ち取ったものなのです!」
そう誇らしげに言うと、出汁を取るなら紅玉藻がいいですよとウィンクして去っていった。

紅玉藻:紅玉海沿岸の漁民の食生活には欠かせない海藻。煮込んで料理の出汁に使うほか、酒に付け込むと安酒も美酒に化けるらしい

へぇー、こんな海藻もあるんだ、今度釣りに行ってみようかな。

 

 

8月のエオルゼア
- シロツメクサの憂う夜 19.07.27
-- ゲネラルパウゼに響く声 19.08.03
--- 雨上がりに伸びる影 19.08.10
---- 次週 星合いに想う空 19.08.17
Presented by LLP

 

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